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モチーフの重みについて

 シガレットから得たもう一つの示唆について。


 シガレットがモチーフとしていたのは身近な人間関係だった。しかしある種の考え方において、身近な人間関係とは小説のモチーフたり得ない。なぜならそれはモチーフとして卑小にすぎ、大方の読者にとってどうでもいいことだからだ。


 しかし小説の語り手の立場に立つのなら、自らが語るモチーフは何であっても「どうでもいいこと」ではない。それは語り手の人生の断片であって、その断片は彼彼女の人生において他の断片よりも重みのある断片だからだ。


 だから書き手は語り手のために頑張らなければならない。書き手は語り手の一番の読者になって、あなたの語らんとしていることはどうでもいいことではないのだと心の底から共感し、語り手のお話に普遍的な重みを与える手伝いをしなければならない。


 この点においてハリーはとても熟練した書き手だった。彼はルイスの語りをこのように文字にすることに成功し、縁もゆかりもない時空を超えた読者の一人であるぼくに強い印象を与えることに成功したのだから。


 ここまで書いて気がついたのだけれど、ぼくがこの小説を好きになった理由はボラーニョを好きになった理由と一緒みたいだ。ヴィヨン詩の作者を好きなった理由と一緒でもある。ジュネを好きになった理由でもある。




 ぼくはまだまだ未熟な書き手で、がんばらなければならない。